Faculty News学部ニュース
WHO神戸センターの茅野医官がGC学部開設10周年の記念講演を行いました。
2025.10.17
グローバル・コミュニケーション学部開設10周年を記念し、 WHO神戸センターの 茅野龍馬医官(健康危機管理担当)が10月8日、 「WHOとグローバル・ヘルス 神戸センターの歩みと次世代へのメッセージ」と題しポートアイランド 第1キャンパスで講演しました。
WHOは「世界保健機関(World Health Organization)」の略で、国連機関の一つです。本部はスイスのジュネーブにあり、コロナ禍ではCOVID19による感染拡大を防ぐための対応を通じて一躍注目を集めました。
神戸センターは阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして地元の支援を受けて1996年に開設。本部機能の一部を担い、緊急時や災害時の健康被害を防ぐための研究推進とエビデンスの活用など重要な業務にあたっています。

茅野医官の専門は災害・健康危機管理、メンタルヘルス、認知症、非感染性疾患。出身の長崎大学医学部などでの勤務を経て2015年から神戸センターに赴任しました。講演を前に大濱慶子学部長が「茅野先生はグローバル・ヘルスの課題解決に向けたさまざな活動や支援にあたっておられます」 などと業績を紹介しました。全体の司会進行は英語コースの森下美和教授が務めました。
登壇した茅野医官は194の加盟国からなるWHOの組織と国際保健における役割について説明しました。「グローバル・コミュニケーション学部」を意識した「みなさん、国際とグローバルという用語の違いは分かりますか」との問いかけもありました。「国際とは国や国境を意識した国家と国家との関係を言います。一方、グローバルは国も国境も超えた地球規模のという意味です。世界全体を包摂するルールづくりと実践が必要です」と述べ、感染症対策や耐性菌の問題など21世紀の保健・健康課題には国を超えたグローバルな対応が求められることを学生らは強く意識しました。

また、 講演ではWHOが発表した「高齢化と健康に関するワールド・レポート」について紹介。中でも高齢者など年齢を理由にする固定観念や偏見、差別である「エイジズム」は問題だとして「経済に対する高齢者の貢献を無視した 思い込みに過ぎない」と指摘しました。2011年の英国の研究では 高齢者は社会の資源であり 、年金や医療、福祉にかかる費用ばかりが問題にされるが、高齢者が支払った税金や商品の消費などでもたらした経済的価値を差し引くと 6兆円 ものプラスになっており、2030年には12兆円に達すると注目すべきデータも示されました。
会場では同学部の1、2年次生約350人が受講しました。卒業後は世界を舞台にした仕事を考える学生へのアドバイスとして、国連機関で働くのに必要なものは三つあると述べ、修士以上の学位と外国語の能力と専門性を挙げました。とても高いハードルですが、関心を示す学生もいたようです。

学生からは「(高齢化と少子化で)自分たちが高齢者になれば十分な年金などが得られなくなるのでは」という不安についての質問があり、茅野医官は「日本には公的年金や公的医療保険制度があります。自分たちはサービスを受けられなくなるのではという思いから高齢者に怒りをぶつけるのではなく、その怒りは本来政府に向けられるべきなのではないでしょうか」と答えました。
WHO神戸センターの本学講演会についての記事はこちら
「高齢化と健康に関するワールド・レポート」に関する記事を集めたWHO神戸センターのページはこちら
神戸学院大学 グローバル・コミュニケーション学部