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【GC学部「国際法入門」で「神戸の街と国際法」について学びました】
2025.06.19
グローバル・コミュニケーション学部の荒島千鶴教授の授業「国際法入門」で6月10日、岩谷暢子客員准教授(海上保安大学校海上保安国際研究センター主任研究員)が「神戸の街と国際法」と題して特別講義を実施しました。市民講座として一般参加も受け付けました。
■講師は元外務省職員の岩谷客員准教授
岩谷客員准教授は元外務省職員で、国際連合日本政府代表部や外務本省での多国間交渉の経験や専門の国際法の知識をもとに執筆した「国連総会の葛藤と創造 国連の組織・財政・交渉」(信山社)、「国連って誰のことですか 巨大組織を知るリアルガイド」(同)の著書があります。
「国際法」が神戸で学んだり暮らしたりしている私たちにとってどのような関わりがあるか、学生時代を神戸で過ごし神戸を愛する岩谷客員准教授の講義を通じて考えることにしました。
まず、「国際法」には国際的な約束事や共通の基準・手続きなども含まれ、中でも2国間や多国間で合意された事項を文書にしたものが条約であり、主権国家の「合意」が基本であることを学びました。国際法を私たちの生活に引き付けて考えるために、岩谷客員准教授は神戸で異国のたたずまいを残す旧居留地の歴史、神戸港と神戸税関の役割、ブランド牛として世界的に知られる「神戸牛」という表示の意味をトピックスとして挙げました。
■神戸の旧居留地と条約
江戸時代末期に日米修好通商条約(1858年)をはじめとしていわゆる「安政五カ国条約」が結ばれ、横浜、長崎、兵庫、新潟、函館の五つの港が開かれました。開港地には領事が駐在し、常駐の使節団が設置されました。こういった外国の使節などが居住するための地域を無期限の借地とした「居留地」が、神戸村に置かれました。安政五カ国条約は、領事裁判権などが認められ、日本に不利ないわゆる「不平等条約」でした。その後、条約改正交渉を重ね、居留地の返還などが実現しました。この100年後、世界の国々は、条約というもの自体が踏まえるべき枠組みについて確認しました。つまり、2カ国間で合意があっても、一定のルールに反する条約は、無効とされるのです。



■神戸港と神戸税関
また、神戸港は現在、「国際戦略港湾」に位置付けられ、開港以来引き続き、人とモノ及び船舶が外国との間を出入りする重要な拠点です。神戸港にもさまざまな国際法(条約)が関係することを具体例で示してもらいました。具体的には、港の重要な役割であるC(Custom=税関)、I(Immigration=出入国在留管理)、Q(Quarantine=検疫)について、いずれも多国間の条約や二国間の条約での決め事が関係しています。神戸税関は、神戸学院大学への通学途上にあり、週末には見学もできます。税関の役割の一つに、関税の徴収があり、関税とは輸入される物品にかけられる税で、多国間条約、地域的条約、2国間条約によって、品目及び輸入元により異なる関税率が規定されているということです。
■地理的表示(GI)の仕組み
「神戸牛(Kobe Beef)」を例として、「地理的表示(Geographical Indication、GI)」の仕組みについて学びました。GIは、もともとヨーロッパで生産者団体の強い意向を背景に作られた特定地域や国の生産者を保護するための登録制度で、現在は多国間条約を通して日本でも適用されています。現在の国際法の仕組みにおいては、国家以外の主体(業界や団体)も大きな役割を果たしており、GIはその良い例と紹介されました。
■神戸空港と国際線ターミナル
以上の説明を念頭に、神戸空港について参加者と考えました。国際線定期便が就航することになったことによって、それまでの神戸空港とはどのように変わったのか? CIQのための施設が必要になり新たなターミナルが作られた、免税店や両替所ができた、など色々な角度から発言がありました。
岩谷客員准教授は、「国際法は、普段の生活や仕事に馴染みが薄いと思うかもしれないが、国際法の大きな仕組みについて理解があると、神戸の中であってもビジネスをしたり商品開発をしたりする際に有利なことが色々あると思います」と、講義を締めくくりました。
神戸で英語を学ぶ:神戸学院大学 グローバル・コミュニケーション学部
https://kobegakuin-gc.jp